このブログでは、すい臓がんを完治するまでの、知識と経験を共有していきます
がんを乗り越えた思考法と、あるチベット僧から学んだ本質
こんにちは、ちこです。
これまで、闘病記でお伝えのとおり、私は「がん」という病を通し、様々な学びや発見を得ています。
今回は、闘病記で書ききれなかった「学び」の中でも、診断直後から取り入れるとメリットの大きい
- 俯瞰思考(ふかんしこう)
- 気づき
についての私の体験と、これら思考法を意識的に行うメリットをご紹介していきます。
つらい気持ちを楽にしたり、今後の治療法や過ごし方を考える際のお役に立てたら嬉しく思います。
『俯瞰思考』という名のサッカーグラウンドの住人が嵐にのまれる
私は、がんと診断され様々なつらい状況を経験しましたが、『俯瞰思考』と『気づき』を使うことで救われました。
この2つの思考法が、具体的にどう私達がん患者に役立つかは後述しますが、
まずは、私の『俯瞰思考』や『気づき』との出会いの経験からお話しさせて下さい。
サッカー選手のような俯瞰的思考を仕事や人生に応用していた
社会人になり『俯瞰思考』のメリットを深く考えるように
わたしが初めて『俯瞰思考』のメリットを深く考えたのは、社会人になりたての頃だったと思います。
仕事で困難に直面し、上司に「俯瞰的にとらえろ」「鳥の目、虫の目、魚の目で考えろ」と教えてもらい
これ以降、意識的に、俯瞰で物事をとらえるようになりました。
『俯瞰思考』はサッカーゲームのようなもの
ところで、サッカー選手は俯瞰的視野でゲームを運ぶという話を聞いたことはないでしょうか?
彼らは必要に応じ、ピッチを上から俯瞰でみてプレーをするのです。
私が俯瞰思考を意識し始めたときも、サッカーゲームをイメージしました。
私は、あたかも自分がサッカー選手になったかのような気分で振るいました。
たとえば、必要に応じ
ある時は、ピッチを俯瞰でとらえ、各選手の動きをよみ(鳥の目)
ある時は、プレイヤーとして、細かなボールさばきをし(虫の目)
ある時は、試合の流れを予想しながら、ゲームを運ぶ(魚の目)
と、こんな具合です。
俯瞰思考(鳥の目・虫の目・魚の目)の詳細については『俯瞰思考(基本編)治療をうまく進める5つの目 』をあわせてご覧ください
状況に応じ、鳥の目、虫の目、魚の目を使うことのメリットは、仕事上だけに留まりませんでした。
人生のさまざまな困難を乗り越えていく上でも、とても役立ったと感じています。
ある日わたしのサッカーグラウンドに巨大な台風がやってくる
ところがある日、この私のサッカーグラウンドに、とてつもなく大きな大きな台風がやってきました。
その名も「すい臓がん告知」という観測史上最大級の巨大台風です。
それまで私は自分のサッカーグラウンド上で
- 鳥の目:困難の全容をとらえ、多角的視点で作戦を考え
- 虫の目:解決策を奥深くまで探り、巧みに実行し
- 魚の目:過去のパターンから未来の流れをよみ、次へ生かす
と、視点を変えながら物事を進めることで、さまざまな局面を上手く乗り越えてきたと考えていました。
ある日までは・・・
グラウンドも上空もすべて嵐の渦にのまれ溺れてしまう
なんとなく予兆はありました。嵐の前の静けさだったり、妙な風が吹いたり・・
そして、2019年2月14日
ドーン!
大きな雷が落ちるとともに、巨大な嵐がやってきたのです
すい臓がん告知。
この嵐によって、グラウンドは濁流の波にのまれていきます。
上空で鳥のように俯瞰していた自分は、強力な風によってグラウンドに叩きつけられてしまいました。
そう、全てが嵐の渦の中にすっぽりと包まれてしまったのです。
延命治療しかないと聞き、もはや、人生というゲームの流れさえも読めなくなってしまいました。
これまで困難を乗りきる武器だった「鳥の目」も「虫の目」も「魚の目」もすべて、嵐により息も絶え絶えとなってしまったのです。
どうしたらいいの・・・?
・・・・・
嵐に溺れていた私を『気づき』が救ってくれた
そんな全てが濁流の中で溺れかけていたとき、あるYouTubeの動画が目にとまりました。
チベット僧 ヨンゲイ・ミンゲール・リンポチェの教えに出会う
ちょうどその日、気分転換にラベンダーオイル入りのお風呂に入りましたが・・
なんだかまだ、病気のことで心が曇り、気分がスッキリしません。
そこで、リビングへ行きテレビのToutubeをつけてみることに。
すると突然、チベット僧侶 ヨンゲイ・ミンゲール・リンポチェさんの明るい笑い声が耳に入ってきたのです。
ヨンゲイ・ミンゲール・リンポチェ / Yongey Mingyur Rinpoche
1975年ネパール生まれの新世代の師僧。チベット仏教の伝統と現代科学の統合をはかる活動を続けている。世界規模で仏教徒、非仏教徒を問わず多くの聴衆を魅了。
「リンポチェ」とはチベット語で「大事な人」という意味で、「~博士」というような偉大な師に与えられる尊称の一種。
彼の動画を観るのは初めてでしたが、なんだか楽しそう。
なんだか楽しそうな人だな
しばらくその動画を流していると、いつのまにか惹きこまれ、「あはは」と笑っている自分がいました。
After two month later, oh, laziness is all over the place. / 2ヶ月後、オー、怠け者がそこら中に・・ ※1
あははは、わかるーw
※1 彼が子供の頃はじめて瞑想のトレーニングを受けたとき、とても退屈だったそうです。それでも最初の1ヶ月は良かったそう。
しかし、2ヶ月後には・・「怠け心がそこら中に!」とおっしゃっています。
がんの告知以来、何をしていてもすぐに集中が途切れ
「もう一生心から笑えることなどない・・」と思った私でしたが
この時は入浴後の髪を乾かすのも忘れ、夢中になって動画を観ていた自分に驚きました。
チベット僧 リンポチェのパニック障害と『気づき』
彼は、この動画の中で「気づき」について、自身の子供時分の体験をお話しされています。
子供のころ酷いパニック障害を患ったそうです。
美しい自然の中で暮らし、優しい人たちに囲まれていたにも関わらずです。
そんなつらい経験や師からの教えについて、以下のように語ってらっしゃいました。
パニックとは戦うな Don’t fight with the panic
パニック障害と戦うでないぞ / Don’t fight with the panic
パニック障害に悩んでいたヨンゲイ・ミンゲール・リンポチェさんですが
お父様や師僧たちから「パニック障害とは戦うな、友達になるのじゃ。いずれお前の先生となってくれるぞ」と言われます。
なぜ? Why?
どうして? / Why?
そのパニックへ「気づく」ことこそが瞑想じゃ / The essence of meditation is awareness
「パニック障害と戦うな」と言われた理由は、パニックへの『気づき』そのものが瞑想・マインドフルネスの基本だから
気づきは壮大な宇宙 An awareness is like space
気づきは壮大な宇宙、パニックは雲のようなものじゃ / An awareness is like space and the panic is like cloud
『気づき』は壮大な宇宙のようなもの、パニックは宇宙にある雲や天気のようなもの
チベット僧 リンポチェが語る『気づき』とは
さらに彼は「あなたの中にある壮大な宇宙のような『気づき』を認識することが鍵だとし
『気づき』に関して以下のように述べています。
『気づき』とは?
快適なものも不快なものも、全てをただ 観察することです
引いて見たり、ひと呼吸おいたりし、より得られるようになります
どんどん『気づき』が増えると、その周りには空間ができるのです
そして、「不快なもの」や「つらい感情」の外へ出られるようになります
つまり
『気づき』を高めることで、「不快なもの」や「つらい感情」は消えていくのです
『気づき』は川や嵐で溺れている私たちを救ってくれる?
川を『気づき』の例として、以下のようにお話しされていたことも印象的でした。
川を見ている貴方は、川の外にいる貴方です。 でももし、川へ落ち、流されてしまったら? もはや、その川が穏やかか?澄んでいるか?など関係なく、 溺れ(必死でつらい)気持ちになってしまうでしょう。 仮に、川の先に滝があったら、滝つぼへ流れおち、命を落としてしまうことさえあるのです。 しかしここで、川の外へ出ることができたら? あなたは、その川や滝の美しさに、あらためて気付くことができます。
これだ!わたしは今、川に溺れた人と同じ・・
人生最大級の「がん告知」という台風にのまれている
ヨンゲイ・ミンゲール・リンポチェさんのお話を聴きながら・・
私も今まさに、「がん告知」という巨大台風の渦の中でもがいている
そんな風にイメージをすることが出来たのでした。
暗闇の中にいた私を『気づき』の光がつつんだ
私がこの台風の大波から抜けでるには、『気づき』が鍵だ・・
暗闇と混乱の中で必死にもがいていた自分に、『気づき』という名の光が射してきました。
この時、ヨンゲイ・ミンゲール・リンポチェさんのお話に偶然出会ったことは本当にラッキーでした。
でなければ、私はそのまま溺れていたかもしれません。
『気づき』の存在を知ってからというもの、わたしは2つの自分を持つようになりました。
- 本来いたサッカーグラウンドとその頭上でプレーをする自分
と
- ①の自分よりさらに高い視座から、より客観的に「奮闘する自分」を眺める自分
なぜ、がん診断直後から『俯瞰思考』と『気づき』を意識すべきか
さて、ここからは私の経験をふまえ、どうして
- がんの診断直後から『俯瞰思考』を意識した方が良いのか?
- ひどく辛いときに『気づき』を意識すると気持ちが楽になるのか?
についてお話ししていきます。
うまく治療に繋げるために『俯瞰思考』が必要
『俯瞰思考』の大切さ
診断直後からすぐに『俯瞰思考』を意識したい理由は、めいめいに最適な生き方と治療を見つけやすくするためです。
多角的に物事をとらえる考え方は、無意識下でも皆さん行っていたはずですが
人は何か大きな出来事に出くわすと、この俯瞰思考を忘れてしまうことがあります。
なぜなら、必死になってしまうから。
そのため、「がん」という大きな波を上手く乗りこえたい今だからこそ
この俯瞰思考を、意識的につかうことが大切になってきます。
生存率を例に『俯瞰思考』で考えると・・
詳しくは、「俯瞰思考」の記事をご覧いただくとして、ここでは一つ例を出してみたいと思います。
私たちがん患者にとっては聞きたくない生存率ですが、これも捉えかた一つで、印象が大きく異なります。
まずは角度を変えてみてみましょう。すると、「確率は0ではない」ということが分かります。
少なくとも、5%、10%、あるいは20%・・少ないですか?
でもね、あなたは「私はただ、この数字の中に入ればいい」と考えることで、より楽観的になれるのです。
「同じ人間なんだからできる。私はできる」と自分を信じるのです。
レイヤーを変えてみたらどうでしょう?
生存率といっても、よく取り上げられるのは「相対生存率」。これだと、低い確率にがっかりしますね。
しかし、実はもう一つ、「サバイバー生存率」というものが存在しています。
下のグラフで、驚異のすい臓がん「サバイバー5年相対生存率」をご覧ください。
診断直後は10%未満と低くとも、5年後はなんと80%近くにまで上昇するのです。
これならどうでしょう?!
生きれば生きるほど、どんどん上がる生存率を見れば
今この瞬間、今日この一日を楽しんで生きることが、明るい未来へ
「今日一日を大切に生きて、明日へ繋げよう!」と思えるようになりますよね!
このように
『俯瞰思考』は、私たちが生きる希望を持つための大きなサポート役となってくれます。
同様に、治療の選択、治療中の生活、幸せに生きる、という過程の中でさまざまな役割で関わってきます。
本当につらい時こそ『気づき』で救われる
さて、俯瞰思考の良さをお伝えしてきましたが、思考だけではどうにもならないコトがあります。
打ちひしがれ思考すらできない時です。
そんな時に意識したいのが『気づき』。
『気づき』の最大のメリットは心の平穏
『気づき』の最大のメリットは、打ちひしがれた心さえも肯定し
穏やかな状態(心の平穏)へと導いてくれることです。
心の平穏が、なぜ病気の治癒に大切かは、以下の記事で詳しくお伝えしました。
がんになると、場合によっては、身体が痛かったり、心が傷ついたり・・
さまざまなつらいことを経験するかもしれません。
そんな時こそ『気づき』をつかうことで、身体や心の痛みを癒すサポートをしてくれます。
心と身体の痛みを『気づき』で和らげる
たとえば、身体の痛み。
脳が痛みを感じるとき
- ① 実際に痛みを感じる部分
- ② 痛みの不快を感じる部分
があり、この2つの相乗効果で痛みの不快度が増していきます。
しかし、② の不快を感じる部分については、否定するのではなく “ただ” 痛みとして『気づく』ことで
その不快と距離をつくることができるようになります。
① に関しては、専門の医師に相談し鎮痛剤で対処してもらえば、①も②もかなりの軽減が期待できるはずです。
心の痛みはどうでしょう?
前述した「私が台風にのまれたかのように感じた」ときと同様、不安や恐怖で混乱したとき、まずは『気づき』の存在を意識する。
そして、一段高い視座で「混乱している自分に『気づく』」ことで、混乱を解いていくことが出来るようになります。
こんな風に、ぜひ『気づき』を意識的にやってみてください。
実は、『気づき』の効用は、大学などさまざま専門機関でも科学的に証明されています。
詳細は、別途書くことにします。
おわりに
今回は、がんの診断直後から使いたい『俯瞰思考』と『気づき』についてお伝えしてきました。
辛いことがあったら、まず周りを頼ってください。一人で抱え込まず、相談してください。
その上で、あなた自身も、今回お伝えしたことを少しづつ意識しながら過ごしてみてください。
あなたがどんどん良くなっていくことを、心から祈っています。
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