このブログでは、すい臓がんを完治するまでの、知識と経験を共有していきます
[睡眠]わたしは睡眠不足でがんになったのか?
こんにちは、チコです。
『闘病記シリーズ 』では、私の2年間の膵がん経験をお話ししましたが
今日は、私の睡眠についてのお話しをしたいと思います。
がんの要因としては、「遺伝」によるもの、「生活習慣」によるもの、あるいは「不運」によるもの
がんは、家族歴や環境的要因ではなく、細胞分裂時に起きるランダムな変異の「不運」に見舞われることによって発生する場合が多くを占めるとの研究論文が、2日の米科学誌サイエンスに発表された
出典:がんの原因、遺伝や環境でなく「不運」が大半 米研究|AFP BB News
など、いろいろな研究レポートがありますね。
個人的には、さまざまな要素が複合的に組み合わさった結果、わたしのがんは発生したのではないかと思っています。
それは、ランダムな不運 ※偶然生じた遺伝子変異 に見舞われたのかもしれないし、その時の生活習慣がいけなかったのかもしれない
あるいは(調べてはいませんが)遺伝が関係するのかもしれないなあ、なんて思っていました。
そんな中、
チコは昔、寝ない生活を送っていたからね・・
姉のポツリと呟いたこの一言が、私の心にとまりました。
つまり彼女は、私の睡眠不足の続いた生活がよくなかったのではないかと、言いたいのです。
え、たしかに。平均睡眠時間が2~3時間の時期もあったね・・
あ、そういえば、友達に「チコちゃん、そんなに働いてよく過労死しないね」って言われたことも・・・
そこで今回、私の睡眠について振り返ってみようと思います。
わたしは睡眠不足でがんになったの?家族から指摘された私の生活
そう、冒頭でお話しした姉との会話のように
おもえば私、本当に寝ない生活を送っていました。
新聞配達をしながらの学生時代は3時間の睡眠
高校卒業後、新聞配達をしながら学生生活を送ることになり、睡眠時間は毎日3時間ほど。
当時、建築を学んでいたのですが、とにかく課題が多くて・・
学校から帰ると、新聞の集金や勧誘の仕事が夜9時過ぎまであり、その後、夕飯、お風呂、宿題を大急ぎで済ませても
深夜12時をまわってしまいます。
慌ててベッドに入るも、あっという間に朝3時からの朝刊の配達時間に。
人によっては、仕事と学業を両立しながら、たとえ少ない睡眠時間でも頑張っている方は実際たくさんいらっしゃいます。
でも、わたしの場合、根性が足りなかったためかパフォーマンスの上がらない学生時代になってしまいました。
眠いよ眠いよー。いつになったらこんな生活が終わるのおおお・・・
その上、4年間の新聞配達学生の生活が終わったと同時に、抜け殻のようになってしまい、あまり深く考えることができなくなっていました。
ありゃ、脳がとけてる?頭がうまく働かない・・・
大人になった今考えれば、「もっとより良い別の選択肢もあったはずなのに」とも思いますが
後悔しても仕方のないことなので、よい経験になったと思うことにしています。
IT業界でのキャリアアップのため徹夜や深夜残業の日々
社会人になり、建築デザイン事務所で働き始めると、7〜8時間の睡眠がとれる平穏な生活が送れるようになりました。
このころは、学生時代に眠れなかった分を取り戻すかのように、規則正しい生活を楽しんでいました。
ところがその後、IT業界へと進路を変更し、また生活状況が変わりはじめます。
最初は、プログラマーとして仕事をはじめますが、もともと専攻が建築だったため、また仕事をしながら学校へ通い、コンピューター・情報処理を学ぶことに。
その後、システムエンジニア、IT内部統制監査、ITチームリーダー、ITプロジェクトマネージャーとして働き
スキルアップの階段をのぼりながら、さまざまなプロジェクトをこなしていきました。
このIT業界、私にとってはとても楽しいものでしたが、ブラックな会社が多いことでも有名。
気が付くと、徹夜や深夜残業の日々でした。
いあー、さすがに2日連続徹夜だとキツいわ・・・ また倒れて救急車で運ばれたらどうしよう~
毎日の膨大な仕事にプラスし、言語、システム設計、IT監査、プロマネなど、新しいスキルの習得にも忙しく、大変なことも多々ありました。
でも、次々と新しいプロジェクトに携われる刺激、システムが完成しプロジェクトを終えたときの達成感
これらが何とも言えない心地良さとなり、忙しさも苦にはなりませんでした。
そして、こんな風に睡眠を取らない生活がその後、健康にどう影響するか
当時の私には、まったく知る由もなかったのでした。
睡眠不足とがん、無関係とは思えないと感じたケース
睡眠不足といえば、私の経験に限らず、他のがん患者さんの経験の中にも、無関係とは思えないものがあります。
偶然かもしれませんが、話を聞いたがん患者さんの中に
「ちょうど新しい仕事や生活をはじめ1~2年経ったころ」や「睡眠不足が続いたあと」に、がんを発症したケースが多いのです。
ここでは、同じ病で友達になった女性と、2021年にがんを公表した坂本龍一さんの例を、お話しします。
同じ膵がんの友達 – 新しい仕事をはじめ睡眠不足が続いた
同じ膵がんで、入院中に意気投合し、よくお喋りさせていただいたMさん。
彼女も、がんになる前に睡眠不足だったと話していました。
新しい仕事をはじめてわくわくしてたけど、睡眠不足がつづいて無理しちゃったかな
彼女はそれまでやっていた仕事にプラスし、新しくガイドの仕事もはじめ、海外にも仕事の幅を広げるようになりました。
そんな矢先、体調崩し検査をしたところ、膵がんと診断されてしまったわけです。
お子さんもまだ小さく、新しい仕事へも胸を膨らませていた。
そんな彼女からこの話を聞き、なんだかやり切れない気持ちとともに、涙がこぼれていたのを思い出します。
坂本龍一さん – 2021年にがんを公表した彼も若い頃は徹夜
2021年1月21日、ミュージシャン・音楽プロデューサーとしてご活躍の坂本龍一さんが、がんに罹患したことを公式サイトで発表されました。
このニュースにショックを受けた方も多いのではないでしょうか。
【関連】坂本龍一さん公式サイト
現在は、手術も無事におえ、治療に励んでいると言う事ですので、まずは1日も早い回復を心よりお祈りしたいと思います。
そんな坂本さんですが、実は彼、2014年にもがんを患っていたのですね。
彼のインタビュー記事を拝見すると、40歳からは健康に人一倍気をつかってきた、いわゆる「健康オタク」だったようです。
【参考】がんになって考えたこと 坂本龍一さん|日経エンタメ!裏読みWAVE
もともと健康に気を使われていた坂本さんですから、2014年にがんを患ってからは、さらに徹底した健康管理を心がけていたのでは?
ということは、容易に想像できます。
インタビューでお話しされている通り、きっととても健康に気を使われていたに違いない
もちろん経済面でも豊かな方だから、口に入れる食材1つ1つにこだわり、健康とされる生活に時間とお金を惜しむ事はなかっただろう
・・・・・
それなのに、どうして2回もがんになってしまったの?!
インタビュー記事を読み、健康に気を使っていてもがんになってしまう不条理さを含め、さまざまなことに思いを巡らせ
なんだか、自分ごとのように切なくなっていました。
ところが
記事を読み進めていくと、彼のある一言にハッとさせられます。
「若い頃は徹夜しても全然平気」
・・・
この言葉を読み、私の中になにか腑に落ちるものがありました。
ああ、そうか。坂本龍一さんもむかし、私と同じあまり寝ない人だったのかもしれない
ここで、『[睡眠]科学的データでみる睡眠不足のがんへの影響 』でご紹介した、東洋経済オンラインの以下のコメントとリンクしたのです。
睡眠不足は、10年から20年の歳月をかけ、時間差でじわじわと悪影響が訪れる
・・・ 睡眠不足による時間差の悪影響、怖いな
もちろん、がんの原因が全て睡眠不足にあるわけではありません。
先述したように、がんは環境や生活習慣、遺伝、不運など、さまざまな要因が複雑にからみあった結果として発症する。
でも、あとになって影響が出てくる睡眠不足の恐ろしさについても、あらためて考えさせられる坂本さんのインタビュー記事でした。
実際のところどうなの?科学的データで見る睡眠とがんの関係
ここまでで見てきたように、私自身のことや聞いた話を総合して考えるに
睡眠不足は直後に引き起こされる倦怠感や不調だけにとどまらず
長い時間をかけ、じわじわと積み上がっていく負債のようなものに思えてなりません。
とはいえ、わたしがお話ししたことは、あくまで経験談レベルです。
では、実際に研究された科学的なデータとしてはどうでしょう?
ランダムな不運(※ 偶然生じる遺伝子変異)の可能性|肝胆膵内科の医師の一言
膵がんと診断された当初、病院主催の膵がん教室に参加していました。
この教室で、ある日、肝胆膵内科部長の先生に
先生、わたし、どうして膵がんになっちゃったと思いますか?
と、うかがったことがあります。
うーん、そうだね・・
それはね、いろいろな要因があるけど、
不運にも交通事故にあってしまった、と同じように考えられる場合もあるんだよ
と、先生は回答してくれました。
先述した「ランダムな不運の可能性」(※事故にあうようにたまたま不運にも起きた可能性)についておっしゃっていたのだと思います。
【参考】がん発生の主な原因は、ランダムな変異によって起こる不幸な偶然/ジョンズホプキンス大学|海外がん医療情報リファレンス
全てのがんは、不運な偶然と環境と遺伝の組み合わせ
引用:「がん発生の主な原因は、ランダムな変異によって起こる不幸な偶然/ジョンズホプキンス大学|海外がん医療情報リファレンス」記事のまとめ
・3分の2は主にがん化促進遺伝子内で生じるランダムな変異「不運な偶然」が原因
・残りの3分の1は環境要因や遺伝形質が原因
生活習慣や遺伝の可能性|国立がん研究センターの情報
生活習慣や遺伝の可能性についてはどうでしょう?
国立がん研究センターの記事が、参考になります。
上記記事では、喫煙、飲酒、食物・栄養、身体活動、体格、感染、化学物質、ホルモンの観点から解説されています。
国立がん研究センターによれば
- 喫煙、飲酒、感染は、ある種のがんのリスクを上げる可能性
- 運動は、がんのリスクを下げる可能性
- 食物は、リスクを上げるものと下げるものがある
とし、日本人の場合、男性のがんの53.3%、女性のがんの27.8%が、これら生活習慣や感染が原因と考えられるということです。
これらは、生活習慣の改善として簡単に取り入れられるため、ぜひ実践するとよいでしょう。
ただ、運動については言及されていたものの、睡眠不足については、あげられていませんでした。
睡眠不足との関連|コホート研究の結果
前章でご紹介した国立がん研究センターの情報には、がんの発生要因として、睡眠については取り上げられていませんでした。
ということは、睡眠不足とがんとの関連を示す研究データはないということなのでしょうか?
調べてみたところ、睡眠不足(あるいは過剰)ががんのリスクを高める可能性についての研究レポートがいくつか見つかりました。
詳しくは、以下の記事でご紹介していますが
たとえば
東北大学大学院医学系研究科からは、
「睡眠時間が短いほど乳がん罹患リスクが高い」「睡眠時間が長いほど前立腺がん罹患リスクが低い」
といった、具体的な睡眠時間とがん種の関係を示す研究結果が出ています。
また、海外の記事に目をやると、以下のような「睡眠不足は、慢性炎症(がんのリスク要因の1つ)のような免疫系の問題と関連する」といったものや
Lack of sleep is related to immune system issues like persistent inflammation, which is believed to raise cancer risk (睡眠不足は、がんのリスクが上がると考えられている慢性炎症のような免疫系の問題と関連する)
出典:Cancer and Sleep|Sleep Foundation
シカゴ大学の「質の悪い睡眠は、がんの成長を速め、腫瘍の攻撃性を高める」といったものまで、ありました。
おわりに
今回は、わたしの睡眠について振り返りつつ、睡眠とがんの関係、がんの発生要因などについてみてきました。
姉が指摘したように、「わたしは睡眠不足でがんになったのか?」については、実際のところ調べようがありませんが
本記事でご紹介したような研究レポートを考えれば、「偶然の不運」や「睡眠不足の続いた生活」も要因として挙がってくるでしょう。
さて、睡眠とがんの研究論文については置いておいて、
実際にがんに罹ったあとに、わたしの心身の声として「身体を癒したい」「睡眠が重要」というメッセージを強く感じました。
ところが
睡眠の大切さを分かったからといって、すぐにグッスリ眠れるようになるわけではありませんでした。
がん患者に多いと言われている睡眠障害になってしまったのです。このお話は、また以下の記事で共有します。
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